江戸時代における先人の業績

関孝和の数学、いわゆる関流の算学の分布は,非常に驚いたことに、日本のほとんど各地に農業技術と結びついた形でひろがっている。
それに、五十歳まで家業に励んでいた井能忠敬が、地理学の勉強をはじめている。彼の故郷である佐原村の周辺に関流の算学の塾が三つも四つもあって、しかもそれがかなり高級なもので、そこへ彼が若いころ自宅から通うことができたからです。
明治の三老農といわれる船津伝次平のような農業のすぐれた改良家たちがいますが,この人たちもほとんど和算学をもとにして(船津は算学の達人です)、農業技術の改良に取り組んでいった。それから、牧野富太郎のような世界的植物学者も、小野蘭山をはじめとする江戸時代の本草学の業績のうえに立ってスタートしているのです。牧野富太郎はイタリアのベソトーレの植物学に学ぶまえに、小野蘭山の本を筆写して、それをたよりに採集,分類していた。