中江兆民

明治22年春、憲法発布せらるゝ全国の民歓呼沸くが如し、先生嘆じて曰く、吾人賜ゝの憲法果して玉耶(たまか)将(は)た瓦耶(かわらか)、未だ其実を見るに及ばずして、先づ其名に酔ふ、我国民の愚にして狂なる、何ぞ如此(かくのごと)くなるやと。憲法の全文到達するに及んで、先生通読一遍唯(た)だ苦笑する耳(のみ)  「幸徳秋水「兆民先生」