明治憲法ができた後の日本の国家機構は、憲法上の国家機関と既成事実として憲法上の規定を持たない国家機関が存在して、二元的に構成されています。その両者の上に立つのが天皇です。憲法上の国家機関としては、内閣、帝国議会、裁判所、枢密院、帝国議会の下に貴族院衆議院で構成されています。憲法外に存在するのが元老、軍事参議院参謀本部、海軍軍令部、内大臣です。それに戦時や事変ときには勅令に基づき宮中に大本営が設置されます。元老は明治維新の最高の功労者からなり、首相ならびに重要な政治的決定に発言権をもっていました。参謀本部明治11年に設置され太政大臣から独立して軍令大権を握っていました。この統帥権独立の慣行は明治憲法下でも貫かれ、戦争の道に向かう軍部の独走を許したことはよく知られているところです。ところで内閣ついては憲法55条に規定があるだけで、この機関自体についての憲法上のその他の規定はないのです。だから、内閣の議会に対する連帯責任は考えられず、憲法55条により各大臣は天皇に対して個別に責任を負うものとされていたのです。