墨子

中国古代史の思想書墨子」に、「天下の害のなかでもっとも目にあまるものは何か。それは大国が小国を攻める、大族が小族を痛めつける、強い者が弱い者を苛む、多数派が少数派をないがしろにする、狡猾な者が正直者を騙す、貴族が平民を侮る等のことである」という意味の記述がみられるが、2千数百年以上の時を過ぎたいまなおこの言葉が有効性をもちうるとは、なんとも嘆かわしいかぎりではないでしょうか。当時、人々が私利をもとめて愛をうしなったことが原因と考えた墨子は、儒家の仁は血縁による差別愛であるとして、無差別の平等愛である兼愛論をとなえ、侵略戦争に反対して、攻伐を非とする非攻論をのべた。