明治維新とは

明治維新とは、これまで上役などに反抗できなかった下層の武士などが、権威や伝統を打ち破る姿である。そういう古い形成にすがって生きていた人々にとってはなんともいやな現象ではあろう。外圧は、氏素姓とかなんとかいう非合理なもののため埋れていた人間にはそれは光明であった。戦うことがいけないんです、といっても、戦いよりほかに自己主張の道が閉ざされていたという条件も考えねばならない。
武士は主君に奉公し、その代償として領有権や俸禄を受ける。武士の奉公の最も重要なものは戦うことだから、武士の名誉も経済的利益も戦うことによってもたらされた。その意識は、明治に入っても急には変わらない。明治政府は戦功者に賞典禄を与えており、藩の内部でも戊辰戦争の戦功者が高い地位を得たり、藩主の賞典禄が戦功者に再配分されるなど、戦功こそが武士の政治的・経済的地位をもたらしていた。現在の自分の地位に不満をもつ武士がいる限り戦い、それも戦争目的に幅広い合意があり、天皇への奉公を示せる戦いが期待された。
世間は大事業の成敗をもって人を褒たり貶したりします。そして成敗の最も著しいのは戦争です。だから、英雄とか偉人になるためには、古今、政治家で国民の信用を得て大事業をなしたる者、門閥や世家の人を除く外は、皆戦争の勝利によるしかなかったのです。